ぬくもりの檻

「ただいま帰りましたぁ」玄関を施錠する金属音からややあって、リビングのドアが開いた。足元を這うような冷気とともに帰ってきた長太郎は、鼻の頭と頬を真っ赤にして、髪の先が少し濡れている。「おう、おかえり。なんだ、雨降ってきた…

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呑まれた話

酔った勢い、というものはないらしい。アルコールに絆された本性が露呈するだけで、それは勢いでもなんでもないという。つまり酔っているときの言動こそが、普段は理性の裏に隠している本当の姿ということになる。「宍戸さんはひどい人で…

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12/25

0:00 SIDE鳳 「あ、宍戸さんこんばんは! メリークリスマスです!」「おー、本当に0時きっかりに電話してきたな」「だって、約束しましたから」スマートフォンの向こうで、宍戸さんは少し呆れたように言った。昨日、日付が変…

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ビビッドピンクの誘惑

注意:女体化百合 「買っちゃったな」「ドキドキしましたぁ」「誰かに見られたりしなかったかな」「マ、マスクもしたし大丈夫……だと思います」ベッドの上に並べたのは、なんでも揃うディスカウントストアでさっき買ってきたビビッドな…

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食べられる長太郎の話

かわいい、と宍戸さんは言った。ぷっくり朱く、トロトロになった恥ずかしいところで俺を飲み込んで、焦点が合っているのかいないのかわからないまなざしで、かわいい、と言った。乗っかられた俺は宍戸さんを見上げていることしか出来なく…

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見つめられる長太郎の話

宍戸さんと一緒に暮らし始めて一か月が経った。お互いの生活の癖みたいなものが少しずつ見え始め譲ったり譲られたりしながら過ごす日々が楽しくて、だけど、一つだけ悩んでいることがある。それは最近、宍戸さんの視線が俺を落ち着かなく…

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夏祭り

起きてすぐにベランダのミニトマトに水やりをしているとどこからか祭囃子が聞こえてきた。そういえば数日前に夏祭りのポスターを見かけた気がする。確か開催場所は近くの神社。宍戸さんを起こすついでにそのことを話したら散歩がてら行っ…

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仲直りする話

ぼふん、と頭まで被っていた夏布団が潰される音とともに体に重みを感じて目が覚めた。顔を出してみると頬に濡れた髪の毛が触れる。風呂上りの石鹸の匂いをさせた長太郎に布団ごと抱き込まれて身動きが取れずにいると、「ごめんなさい」と…

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やりすぎてしまった話

日曜日の昼下がり。出掛ける支度を整えた俺たちは玄関に向かって幾分かひんやりとした廊下を進んだ。「とりあえず先にどこかで腹ごしらえしましょうか。そのあと映画なんかどうです? 宍戸さん、見たいものがあるって言ってませんでした…

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部室で秘密の時間を過ごす二人の話

宍戸さんの唇がひたいに触れる。温かさに思わずまぶたをぎゅっと閉じたら、皺の寄った眉間にも同じように口づけられた。「次は?」薄く瞼を開いたら宍戸さん顔がすごく近くてびっくりしちゃって、でも座り込んだ背中はロッカーにくっつい…

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風邪をひいた長太郎の話

「長太郎、具合どうだ?」トーンを抑えた聞きなれた声がして、俺はまぶたを開いた。今朝目覚めたときから熱があり大事を取って横になっていたのだけれど、重くなるまぶたに反してなかなか眠れず今に至る。宍戸さんが俺のおでこのぬるくな…

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朝のあれこれ

背中にぴたりとくっついて眠っていたはずの長太郎に首筋を甘噛みされる。鳩尾を撫でる温かな手のひら。その指先は俺の鼓動を確かめるようにゆっくりと左胸を這い、尖りを擦り始める。ゆうべ散々弄ばれたせいで、些細な刺激ですら俺を夢の…

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月に共鳴

目覚めたときから微熱があり、学校を休むほどでもないからと家を出たはいいものの、動くたびに体の感覚に違和感があった。首元が苦しい。ネクタイを緩めても、シャツの襟ぐりがうなじや首筋に触れるだけで息苦しく感じる。衣服の布地は胸…

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