オオカミなんです、俺。青空の屋上で、弁当の肉団子に箸を突き刺しながら長太郎は言った。横目で見ながら口の中のサンドイッチを飲み込んで、パックの牛乳を啜って、流れの遅い雲を見あげる。「なんだそれ。昨日のこと言ってんのか」「え…

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月に共鳴

目覚めたときから微熱があり、学校を休むほどでもないからと家を出たはいいものの、動くたびに体の感覚に違和感があった。首元が苦しい。ネクタイを緩めても、シャツの襟ぐりがうなじや首筋に触れるだけで息苦しく感じる。衣服の布地は胸…

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テンダー・モーニング

※鳳宍に娘が産まれています。 白い砂浜を踏みしめる。潮風と照り付ける太陽を肌で感じて、波の音を聞いた。長太郎が波打ち際まで俺の手を引く。笑顔。打ち寄せる波。つま先が、濡れる。 「おとうさん! おきて!」「んあ?」毛布ごと…

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セイフティ・コクーン

『エスケープ・ジャーニー』に収録。二度目のヒートが来た宍戸さんが巣作りして長太郎を待つ話。 東京に戻り生活が落ち着いたころ、なんの兆しもなく二度目のヒートが訪れた。ヒートの周期がまだ安定していない宍戸は発情の予測が立てら…

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エスケープ・ジャーニー

これは人類の誰しもが、第二の性と呼ばれるα、β、Ωのいずれかをもって生まれてくる世界のお話。 宍戸亮は希少種である男体のΩとして生を受けた。生まれてきた子がΩであることを知った両親は、βである彼の兄と同様に宍戸をのびのび…

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