鳳長太郎の赤い恋
バレンタインが近い。クラスの女の子たちは誰にどんなチョコレートをあげるかという話題で持ちきりだ。こっそり盗み聞いている男子たちは、気にならない振りをしていても期待を隠しきれない様子でそわそわしている。友達に、おまえは気に…
続きを読む →バレンタインが近い。クラスの女の子たちは誰にどんなチョコレートをあげるかという話題で持ちきりだ。こっそり盗み聞いている男子たちは、気にならない振りをしていても期待を隠しきれない様子でそわそわしている。友達に、おまえは気に…
続きを読む →酔った勢い、というものはないらしい。アルコールに絆された本性が露呈するだけで、それは勢いでもなんでもないという。つまり酔っているときの言動こそが、普段は理性の裏に隠している本当の姿ということになる。「宍戸さんはひどい人で…
続きを読む →0:00 SIDE鳳 「あ、宍戸さんこんばんは! メリークリスマスです!」「おー、本当に0時きっかりに電話してきたな」「だって、約束しましたから」スマートフォンの向こうで、宍戸さんは少し呆れたように言った。昨日、日付が変…
続きを読む →サークルの飲み会が長引いて、家に帰りついた頃にはすでに日付が変わっていた。玄関には俺のものじゃない見慣れたスニーカー。宍戸さんが来ているようだ。うちの合鍵を渡しているから、ここには自由に出入りが出来る。「ただいまぁ」リビ…
続きを読む →かわいい、と宍戸さんは言った。ぷっくり朱く、トロトロになった恥ずかしいところで俺を飲み込んで、焦点が合っているのかいないのかわからないまなざしで、かわいい、と言った。乗っかられた俺は宍戸さんを見上げていることしか出来なく…
続きを読む →長太郎は王子様らしい。ピアノが弾けて、物腰柔らかで、いつも優しくて、スラッとした長身で、他の男子とは違ってバカ騒ぎしたりしないし、にこやかに微笑む姿が王子様そのものなんだと。クラスの女子たちからその話を聞いたときは鼻で笑…
続きを読む →ぼふん、と頭まで被っていた夏布団が潰される音とともに体に重みを感じて目が覚めた。顔を出してみると頬に濡れた髪の毛が触れる。風呂上りの石鹸の匂いをさせた長太郎に布団ごと抱き込まれて身動きが取れずにいると、「ごめんなさい」と…
続きを読む →宍戸さんの唇がひたいに触れる。温かさに思わずまぶたをぎゅっと閉じたら、皺の寄った眉間にも同じように口づけられた。「次は?」薄く瞼を開いたら宍戸さん顔がすごく近くてびっくりしちゃって、でも座り込んだ背中はロッカーにくっつい…
続きを読む →初めて長太郎を壊したいと思ったのは夏の暑い日、部活が終わって帰り支度をしているときだった。ベンチに座って靴紐をほどくあいつの首筋が晒されていて、それを見下ろしながら、歯を立ててみたらどんな触覚がするのだろうか、肌はどんな…
続きを読む →注意:女体化百合 青天の霹靂ってこういうことだ。今日は二月十六日で、バレンタインデーの二日後で、つまり私の誕生日の二日後で、当日にお祝いできなかった代わりにちょっといいレストランでご飯食べようって誘ってくれた宍戸さんは珍…
続きを読む →目覚めたときから微熱があり、学校を休むほどでもないからと家を出たはいいものの、動くたびに体の感覚に違和感があった。首元が苦しい。ネクタイを緩めても、シャツの襟ぐりがうなじや首筋に触れるだけで息苦しく感じる。衣服の布地は胸…
続きを読む →これは人類の誰しもが、第二の性と呼ばれるα、β、Ωのいずれかをもって生まれてくる世界のお話。 宍戸亮は希少種である男体のΩとして生を受けた。生まれてきた子がΩであることを知った両親は、βである彼の兄と同様に宍戸をのびのび…
続きを読む →何かに付けてヘべれけになるまで飲んでしまうのが大学生という生き物だ。斯くいう俺も例に漏れず場の雰囲気に流され、飲んでは飲まされ、体の感覚が自分が制御できる範疇を超える一歩手前でそろそろ会もお開きということになり、帰り支度…
続きを読む →結局、俺は長太郎と付き合うことになった。もちろん、恋人としての意味で、だ。俺の生活がなにか変わったかと聞かれれば、何も変わらないと言える。大学に行って、テニスして、バイトして、その繰り返し。だけど、ふとした瞬間に、例えば…
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