エマージェンス・ピリオド DAY6

朝から長太郎が離れない。顔を洗う時も軽く部屋の掃除をしている間も、俺の後ろをついてまわってはくっついてばかりだ。遅めの昼食を作るためにキッチンに立ったのだが、背中から抱きしめてくるので野菜を切る手が止まってしまった。「お…

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エマージェンス・ピリオド DAY5

起床。まずは洗濯物を洗い直すことにした。昨日洗ったまま洗濯機の中に放置してしまったのはいけない。宍戸さんのお世話を完璧にこなそうと決意したというのに、最後の最後で詰めが甘かった。「だってさぁ、宍戸さんてば、たまんないんだ…

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エマージェンス・ピリオド DAY4

しっかりしなきゃと自分で自分を鼓舞したはいいものの、そう容易いことではないと鳳は自覚していた。宍戸のフェロモンに誘われたら何をおいても身を差し出してしまうのだ。食事よりもセックス、睡眠よりもセックス。性的欲求を満たそうと…

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エマージェンス・ピリオド DAY3

腰の上にのしかかる重みと、濡れた感触で目が覚めた。どうなっているのか、何をされているのか、まぶたを開く前からわかっていた。なぜなら眠る直前まで同じ温かさに包まれていたのだから。「長太郎、起きたか?」俺に跨る宍戸さんは、裸…

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エマージェンス・ピリオド DAY2

東京に戻ってきてから初めてヒートを起こした宍戸は、鳳の衣服で巣を作り緩やかに発情した。その甘いフェロモンに呼応するように、鳳は宍戸を求め、宍戸は巣に招き入れた。これは、ヒートに不器用なΩと、彼を心から愛するαの、巣ごもり…

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明日は日曜

トリシシおうち診断からお題頂戴しました “小さな台所で お互いの体の贅肉をつまむ 次の日のデートに浮かれている鳳宍”(デート感はどこかにいきました)   明日は日曜。晩御飯を食べ終わったし、お風呂にも入ったし、あとは眠る…

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すきなところ

「俺ね、宍戸さんの手が好きです」寝転がったまま俺の手を取って、長太郎は目を細めた。体を重ねて、汗だくになって、果てたあとに残った心地いい疲労感にまどろみながら見つめられると、満足したはずなのにまた触れたくなってしまうから…

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ぬくもりの檻

「ただいま帰りましたぁ」玄関を施錠する金属音からややあって、リビングのドアが開いた。足元を這うような冷気とともに帰ってきた長太郎は、鼻の頭と頬を真っ赤にして、髪の先が少し濡れている。「おう、おかえり。なんだ、雨降ってきた…

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見つめられる長太郎の話

宍戸さんと一緒に暮らし始めて一か月が経った。お互いの生活の癖みたいなものが少しずつ見え始め譲ったり譲られたりしながら過ごす日々が楽しくて、だけど、一つだけ悩んでいることがある。それは最近、宍戸さんの視線が俺を落ち着かなく…

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夏祭り

起きてすぐにベランダのミニトマトに水やりをしているとどこからか祭囃子が聞こえてきた。そういえば数日前に夏祭りのポスターを見かけた気がする。確か開催場所は近くの神社。宍戸さんを起こすついでにそのことを話したら散歩がてら行っ…

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やりすぎてしまった話

日曜日の昼下がり。出掛ける支度を整えた俺たちは玄関に向かって幾分かひんやりとした廊下を進んだ。「とりあえず先にどこかで腹ごしらえしましょうか。そのあと映画なんかどうです? 宍戸さん、見たいものがあるって言ってませんでした…

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風邪をひいた長太郎の話

「長太郎、具合どうだ?」トーンを抑えた聞きなれた声がして、俺はまぶたを開いた。今朝目覚めたときから熱があり大事を取って横になっていたのだけれど、重くなるまぶたに反してなかなか眠れず今に至る。宍戸さんが俺のおでこのぬるくな…

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朝のあれこれ

背中にぴたりとくっついて眠っていたはずの長太郎に首筋を甘噛みされる。鳩尾を撫でる温かな手のひら。その指先は俺の鼓動を確かめるようにゆっくりと左胸を這い、尖りを擦り始める。ゆうべ散々弄ばれたせいで、些細な刺激ですら俺を夢の…

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テンダー・モーニング

※鳳宍に娘が産まれています。 白い砂浜を踏みしめる。潮風と照り付ける太陽を肌で感じて、波の音を聞いた。長太郎が波打ち際まで俺の手を引く。笑顔。打ち寄せる波。つま先が、濡れる。 「おとうさん! おきて!」「んあ?」毛布ごと…

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セイフティ・コクーン

『エスケープ・ジャーニー』に収録。二度目のヒートが来た宍戸さんが巣作りして長太郎を待つ話。 東京に戻り生活が落ち着いたころ、なんの兆しもなく二度目のヒートが訪れた。ヒートの周期がまだ安定していない宍戸は発情の予測が立てら…

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エスケープ・ジャーニー

これは人類の誰しもが、第二の性と呼ばれるα、β、Ωのいずれかをもって生まれてくる世界のお話。 宍戸亮は希少種である男体のΩとして生を受けた。生まれてきた子がΩであることを知った両親は、βである彼の兄と同様に宍戸をのびのび…

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あきうらら

秋晴れ、空が高い。窓際にはこじんまりした丸テーブルと、アンティーク調の装飾が施された椅子が二脚。その片方に腰掛けて外を見ると、黄に色を変えた楓の葉っぱが切りそろえられた芝生の上にちょうど着地したところだった。「晴れてよか…

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